芭蕉に会って俳句熱を取り戻したい
押忍!
20歳のころ俳句に興味を持った。きっかけは朝日新聞で連載していた「折々のうた」だったと思う。詩人で批評家の大岡信氏が、詩、短歌、俳句など内外のすぐれた短詩型文学を紹介する短いコラムである。
なかでも、必要最小限の字数で広い宇宙世界を表現する俳句に心を奪われた。「自分でも作りたい」。以来、見よう見まねで実作を始める。もっともアツかった20代半ばは、1日1句と課してせっせと量産していたほどだ。そのノートは今でも家のどこかにあるが、いろんな意味でこわいので読み返す気にはならない。
そして近年、縁あって2つの句会に入会した。ともに開催は月に一度。2008年には24回の句会があったことになる。しかし、忙しさにかまけて出席率は3割程度。これではいけない。あの頃の俳句熱よ、もう一度。
今回のテーマは「今年やり残したことをやる」。この言葉を胸に、冷たい雨の降るなか、俳句界のメッカともいえる場所、「江東区芭蕉記念館」を訪れた。
メッカ、寒いです
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芭蕉先生にお詫びをする
館内には俳句の神様、松尾芭蕉にちなんだ資料や書簡類が展示されていた。そもそもこの界隈は彼が住んでいた場所で、有名な紀行文『おくのほそ道』の出発地でもある。
館内は撮影禁止なので、ここは駆け足で回ろう。

手帳に来館記念スタンプを
俳句脳に切り替わったところで、次に向かったのは同館にほど近い展望庭園。
この石段の上に…

芭蕉先生が
先生に最近の怠慢を詫びつつ、深々と頭を下げる。「いいんじゃよ、これからがんばれば」という声が聞こえた気がした。

すんません! 自分、怠けてました!
眼下に隅田川。先生の視線の先には『おくの細道』で巡った東北の地があるはずだ。

芭蕉目線の風景
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「芭蕉そば」が美味かった
本当はここで俳句を作ろうと思っていたのだが、あまりにも寒いので、先生に許可をもらって近所の喫茶店で作ることになった。近くにある芭蕉稲荷神社に立ち寄りつつ、喫茶店を探す。
賽銭は105円。先生、消費税分を上乗せしときました
ふたたび歩いていると「芭蕉そば」というのぼりを発見。これは入るしかない。

俳味あふれるそばなのか
先客が何人かいる。店のおばちゃんに「芭蕉そば」420円を注文。ほどなくして出てきたのは、予想以上の一品だった。
掻き揚げとほうれん草と卵焼き(5・7・5)
おばちゃんいわく、「おそばに厚焼き卵を乗せてるのはウチぐらいじゃないかねえ。芭蕉さんの時代はかなりの高級品だったみたいですよ」。
出た、芭蕉トーク。いやがおうにも気分は盛り上がる。そして、美味い。汁も飲み干して店を出た。
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いよいよ実作
さて、勝負はこれからだ。芭蕉パワーが消えないうちに珠玉の名句を作りたい。目についた手ごろな喫茶店に入る。

俳人のバイブル、俳句歳時記
歳時記を繰ると様々な季語が飛び込んでくる。寒雀、かまいたち、ボーナス。どれも魅力的な季語だが、残念ながらそういうものには一切触れていない。
別のテーブルでは何かの商談をしているようだ。誰かが「水素エンジンはこれから来ますよ」と言っている。しかし、残念ながら今日は水素エンジンにも接していない。

議題はほどなくして「少子化問題」に移った
気を取り直して、さっき見た風景、聞こえた音、感じた思いを反芻する。1時間後。何とか5句が完成した。見ていただきたい。
句碑濡れて文字判じ得ず冬の暮
短日や芭蕉像いま立たんとす
冬の川要所要所に橋を置く
半眼で社を守る狐かな
水洟や見知らぬ人と蕎麦を喰ふ
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喫茶店の店員さんが選んだのは…
よし。この中でいちばんいい句を記念館の中庭にあった投句箱に投句しよう。優秀作品は記念館のウェブサイトに掲載されるらしいのだ。
短冊に清記してしばし考える
ダメだ。自分の句はどうも客観的に見られない。お勘定の際にお店の人に聞いてみることにした。「どれが一番いいと思いますか?」。その女性はちょっとびっくりした様子で「えー、別の人に聞いたほうがいいんじゃないでしょうか」と言いつつも、一生懸命考えてくれた。
無限とも思える長い時間が過ぎる。実際は20秒ぐらいだったかもしれない。

「これですかねえ」
彼女が指さしたのは「冬の川要所要所に橋を置く」だった。ありがとうございます。入選したらまたコーヒーを飲みに来ます。

投句完了!
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[まとめ]
芭蕉記念館はすごい。館内はもちろん中庭の木にも堤防の壁にも、あらゆる空きスペースに俳句があった。俳句脳もかなり活性化した気がする。あと、そばが美味かったです。先生、ありがとう。
記念館で購入した芭蕉グッズ
■江東区芭蕉記念館(http://www.kcf.or.jp/basyo/index.html)
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